2024-04

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春浜の二人(仮題)

春浜中学二年C組は、二人の中心人物によっていつも男女の口げんかが絶えないクラスだった。
千春は物腰柔らかでお淑やか。少しだけふっくらした体型と丸い顔、大きめで形のいい胸で、男子からのあこがれだった。一方、祐子は、どちらかと言えばガサツなほうだが、モデルのように細身の体型と、サバサバした性格で女子たちの話題の中心だった。二人は互いに、『自分とは住む世界が違う人』だと感じていた。その一方でなぜか偶然同じ日に髪型を変えてきたり、一緒に選んだわけでもないのにペンケースが同じだったり、宿題をうっかり忘れてしまった日が同じだったりと、変に息の合うことを互いに口に出しはしないが鬱陶しく思っていた。

この地域では毎年豊年祭が行われ、その内容は田圃で泥んこ遊びをしたり、泥んこ競技をするといったものだった。運動が得意な祐子は勿論参加。千春は親が主催者の一人であったがために半ば強引に参加させられた。その最初で早速運命ともいえる勝負になった。泥んこ相撲で祐子と千春が当たることになったのだ。祐子は女子の応援を味方に、千春は男子の応援を味方に戦う。
勝負は祐子が優勢になると思われた。しかしいざ戦い始めると、千春は田圃に慣れていたおかげで互角の勝負になった。互いににじり合う。千春は祐子の腰をつかむと、ぐりん、と祐子の体を振った。祐子はよろけながらも千春の足を払い、どぷっ、という音と一緒に二人同時に泥の中に倒れた。泥んこ娘が二人起きあがった。二人とも測ったかのように顔の半分が泥に染まっていた。
判定ができず、仕切り直してもう一番。こんどは千春が足を払うと同時に祐子は千春を突き飛ばした。また同時に泥の中へ。千春は背中をドロドロにされた。祐子は顔まで泥まみれだ。みたび一番。またまた二人同時に、千春はうつ伏せに、祐子は仰向けに倒れた。これでもう二人とも全身泥まみれ。わずかに千春が先だったと判定され、ようやく勝負がついた。
戦い抜いた二人はそれぞれの味方に水を浴びせてもらった。汚れこそ落ちなくともあらかた泥が落とされ、次の競技である泥スキーに移った。泥の中を板一枚でうつ伏せで進むのだ。今回も互角だ。まるで転ける位置が決まっているかのように同時に転け、また全身泥まみれで、今回も同時着。仕切り直しを3度もやった。わずかな差で祐子が遅れたという事になった。
「なんかあたしたち、ムカつくほどそっくりね」
祐子はぶっきらぼうに言った。
「全くね。あー、やだやだ」
千春が言った。これが初めて交わした二人の会話だった。
どうせまた泥まみれになるからと水浴びを断り、顔だけ洗って泥んこビーチフラッグにうつった。やっぱり互角。2度もフラッグの奪い合いになり、最後は祐子が奪取した。
「はぁ・・・あ、でもなんかこの泥んこって、気持ちいいかも」
祐子は独り言を言った。二人は驚いた。全く同じ台詞を千春も同時に言ったからだ。
「千春、あんたもそう思うんだ」
「祐子って、変だね」
「お互い様じゃないの」

最後は茣蓙渡り。対岸まで走って渡るのだが、既に渡った人の泥が付いているので、とても滑りやすい。二人はほとんど同じ場所で転び、また同時についた。判定では千春の勝ちになった。
「まったく、どこまで似てるんだか!」
祐子はため息をつき、あぜ道に座った。その横に千春も座った。しばらく体についた泥を手で払った。千春が口を開いた。
「ねえ、祐子。祐子はいつも同性ばっかと喋ってるけど、オトコ作る気はないの?」
祐子は答えた。
「あんたこそ、女友達いないの?」
「聞いてるのはあたしなんだけど」
「ったく、オトコね・・・今は興味ないかな。うちのクラス全員ガキじゃん」
「興味ない?まぁ確かに、単純なやつばっかだけど、話してみると面白いかもよ?」
「で、あんたはどうなのよ。女友達」
「あー、避けてるつもりはないんだけどな。男子と話してるだけで媚びてるみたいに噂されるのは心外」
「媚びてるんじゃなかったんだ」
「遊んでやってるだけ。男子ってこれだけですぐ釣れるんだから」
と、千春は胸をよせた。
「あんたはいいよね、胸もあるし頭もいいし」
「あるといらないもんだよ。変な目で見てくる先生もいるし。ファッションもできないし。祐子が羨ましいときもある」
「あたしだって一度はなってみたいわよ、その美人面にそのおっぱい」
「美人面?祐子のほうがシュッとして美人じゃん」
そう言われると、祐子は急に顔が熱くなった。
「な、何言ってんのよ。あんたのほうが美人に決まってるじゃん。目は大きいし、丸顔だし」
千春も顔が熱くなるのを感じた。
「え?な、何言い出すのよ。祐子のほうが美人だよ。睫毛長いし、肌綺麗だし」
「な、なによ!いい胸して!千春のほうが可愛いもん!」
「ええ!?祐子のスタイルの良さのほうが断然いいもん!」
そこまで言うと、二人とも黙って顔を背けた。しばらく沈黙が続いたが、次に口を開いたのは千春だった。
「祐子・・・こんなこというと変かもしれないけどさ、実は、ずっと前から祐子と話がしたかった」
「あたしも。千春と話したかった。だって、こんなに合うやついなかったもん」
「祐子は憧れだったの。祐子が・・・その、好きなの」
「千春・・・実は、あたしもずっと前から好きだった」
二人は向き直り、座ったまま抱きしめあった。
「祐子って、温かいね」
「千春って、柔らかいな」
二人は手を組み、おでこを付け合う。
「千春・・・好きだよ」
「祐子・・・大好き」
夕暮れの陽の光を浴びながら、二人は自然と、唇を重ね合わせた・・・

「ぶっ、泥の味・・・」
「じゃりっとした・・・でも、祐子の唇、柔らかい」
「千春の唇も温かいじゃん」
祐子は立ち上がると、泥の塊を手で掬い、千春に優しく撫でつけた。
「なにすんのよー」
千春は祐子の服の中に泥の塊を入れ、揉むように撫でつけた。
「あーん、ひどい」
千春も祐子もとっぷり陽が暮れるまで泥を撫でつけあった。まるで、近づけなかった心を通わせるように。

コメント

はいまた百合小説ー。
泥をテーマにしようとしたんですよ。んで、最初から仲いいのは前にいくつか書いてたんで、今回は趣向を変えたつもり・・・でも百合に変わりないか。

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