2024-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Under the Water Cafe-Ryu-

街から1時間も電車に乗って、さらに30分も歩く。周囲にあぜ道が広がる場所、そこにその店はあった。
建物はとても大きい。知る人ぞ知るその店は、僕のような特殊な美を求める者のために作られた店だ。

僕は胸の高鳴りを抑え、ドアの取っ手を掴んだ。深呼吸をして、ゆっくりと扉を開いた。

「いらっしゃいませ」
甲高い声が聞こえた。見た目は普通の喫茶店だ。建物の大きさの割に喫茶スペースは小さい。かなり凝った作りで、壁はクリーム色で統一され、テーブルやチェアーも洋風のデザインになっている。レジカウンターの横にはブラウンのカーテンと奥に通じる通路があり、一見普通の従業員専用口に見える。
僕が行きたいのはそのカーテンの向こうだ。

「いらっしゃいませ」
メイド服のようなエプロンをつけた女性店員が笑顔でカーテンの前に立っていた。店員は背がすらっと高く、30代半ばと言うところだろうか、とても落ち着いた雰囲気だ。
「喫煙席ですか?」
「あっ、えーっと、店長代理はいらっしゃいますか?」
僕は少し声が上擦ってしまった。店員は慣れたように続けた。
「かしこまりました。それでは奥へどうぞ」

初めての来店の時は店長代理を呼ぶことがキーワードだ。2回目以降は会員カードを提示するだけでいい。


案内された先には別の店員がいた。先ほどと似たような年頃に見える。
「初めてですね?それではまず会員カードをお作り致しますので、身分証をご呈示の上、こちらに住所、氏名、電話番号をご記入下さい。また、こちらの注意約契にも同意の上サインをお願いします。」
薄い水色の紙に、ボールペンを渡された。レジカウンターの横で記入した。記入中に身分証のコピーをとる承諾をうけ、了承した。
「お願いします。」
「はい、こちらへどうぞ。」
カーテンの中に案内され、その店員とは別れた。次の店員が待っていた。
「今回お客様を担当させていただきます、アユミと申します。よろしくお願いします。」
背の小さな店員さんだ。年は同じか少し下かもしれない。ぴょこっとお辞儀をする姿はまるで子供みたいだった。最初に通された部屋は衣装部屋で、担当する店員さん、つまりアユミさんの衣装を決められるようだった。1着目は無料。僕は迷わず冬のセーラー服をお願いした。
「あ、お客様、どのようにお呼びさせていただきましょうか」
「え?ああ、リュウ、でお願いします。」
「こちらの衣装ですと、生徒と先生、同級生、リュウ様が後輩、リュウ様が先輩、というメニューがありますが、」
「じゃ、同級生で。」
「かしこまりました。こちらがロッカールームでございます。靴をこちらへ、それからお荷物や貴重品などはあちらへお願いします」
僕は靴を脱ぎ、青い靴箱に靴を入れ、緑色のロッカーに荷物をおいた。ロッカーにカギがついているだけでなく、中に黒い金庫もあった。金庫には指紋認証システムがついていた。
「終わられましたか?」扉越しにアユミさんの声がした。はい、というと、セーラー服姿のアユミさんが立っていた。
「コースのご説明はよろしかったでしょうか」
コースは3つに分かれていた。ホームページにそれは載っていた。
「あ、Aコースで」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
アユミさんに促され、僕はその次の扉を開けた。

とても大きなドーム型の施設の中央には、丸い大きなプールがあった。プールの中心には噴水があり、その噴水の上には白い人魚像があった。プールを囲むように広い通路があり、その周りにテーブル席が並んでいた。

「ねぇ、リュウ君、あっちの席に行こ!」
もう始まっているらしい。アユミさんは僕の手を引いて歩き出した。


席に着き、アユミさんが言った。
「飲み物何がいい?」
「あ、コーラで」
「わかった~」
アユミさんが取りに行ってる間、テーブルに置かれたメニューと説明書きを読んだ。ソフトドリンクばかりで、お酒はおいていない。食べ物も少しあるが、大したものはない。その代わり、バケツ、ペットボトル、水鉄砲といった容器のメニューがある。それぞれ量が多くなる事に値段も高い。また、説明書きには、天井についての説明がついていた。天井には穴のあいたパイプが並んでいて、シャワーになっている。僕の席の横のボタンを押せばシャワーが出る仕組みだ。こちらは無料。
「おまたせ!はい、コーラ。」
「ありがとう。」
僕はコーラを飲んだ。アユミさんはお茶を飲んだようだ。
「さぁ、プール行く?シャワー浴びる?」
「んーじゃあ、」
と、僕は赤いボタンを押した。
バケツをひっくり返したような水が僕とアユミさんを襲った。アユミさんはあくまで自然なことのように、髪を整えたりせず、淡々と続けた。
「気持ちいいね!」
「ああ。」
赤いボタンを押し、シャワーが止まった。全身びしょ濡れどころかテーブルまでびちょびちょだった。やっと髪を整えると、アユミさんは笑った。
「ふー。ビショビショー」
「そ、そうですね」
「リュウ君?同級生なんだから敬語はやめてよ。それとも緊張してるの?」
僕はつい頷いてしまった。
「そんなにかたくならないで。」
というと、アユミさんは立ち上がり、僕の横に座った。
「なんか、シチュじゃなくてリアルに年同じくらいじゃない?」
「21です。」
「あ!一緒だ。なら丁度じゃん。リュウ君は女の子とあんまし話ししない?」
「いや、そうでは・・・」
「なら、丁度いいじゃんじゃあ・・・そうだなぁ、リュウ君はどこでこんなことを覚えた?」
「びしょ濡れ・・・ですか?」
「あ、敬語禁止」
「あ・・・はい」
焦るなぁ。
「で、それをどこで?」
「あ、えーっと、3年前くらいに大水の日があったじゃないで・・じゃない?」
「うん。」
「そのとき、どうしても道路を泳いで渡らなくちゃ帰れなくて、服のまま泳いだのがきっかけ。」
「あ、そのとき私も泳いだ~」
「まじで?アユミさんは」
僕の言葉をアユミさんは遮った。
「今はアユちゃんって呼んで。」
「あ、はい。で、アユちゃんは濡れる目的で?」
「よくわかるね~。そのために家から出て、わざわざマルユウまでいったもん」
「マルユウ?」
マルユウはうちの近所のスーパーだ。系列店ではないから・・・
「マルユウって辰木町の?」
「そうだよ。あれ?何で知ってるの?」
「近所。」
「まじでー!?私たち近所じゃん!うち辰木町に住んでるよ。」
「僕は松野町。」
「隣じゃん!どっかで会ってたかもね・・・っていうか、小学校一緒じゃない?」
「ん?汐乃木小?そうだ!」
「リュウ君名字は?」
「市川。市川竜一」
「あたし、狭川亜由美!」
「あっ、え!」
狭川さんといえば学年一の美少女だったひとだ。僕も片思いしていた。狭川さんは私立中学に行って離れてしまったひとりだ。
「なんだ~。市川君だったんだ。昔は背がちっこくて細かったやん。見違えちゃった。」
「狭川さんこそ背、高かったっしょ?」
「え?あ、あはは、私、牛乳が大っ嫌いで、そのせいか背は昔から大して変わってないの。」
「そっか。すっごい、今も変わらず可愛い。」
「え!」
狭川さんは顔が赤くなった。
「正直、緊張してたのは、初めて店にきたってのもあったけど、店員さんが可愛くて緊張したんだよ。」
「もうっ!うまいんだから~」
と、狭川さんは僕を軽く押した。そのせいで僕はバランスを崩し、赤いボタンを押してしまった。またバケツをひっくり返したようなシャワーが襲った。狭川さんは突然のことで「ひゃっ」と声をあげてしまったが、僕が赤いボタンをすぐ押そうとするのを止め、しばらく二人でシャワーを浴び続けた。頃合いを見てシャワーを止め、びしょ濡れになった服や髪から雫を払った。
「あー!気持ちいい」
狭川さんは濡れた服を撫でながら言った。
「さて、プール行こうか」
僕が提案すると、狭川さん・・・アユちゃんは笑って
「さんせーい!」と言って付いてきた。
まずアユちゃんをプールに突き落とした。すぐに飛び込み、水中で見つめ合った後、水面に出た。
「あー、最高。」
アユちゃんは気持ちよさそうに立ち泳ぎをしていた。僕は店では『アユちゃん』と呼ぶことを思い出し、聞いた。
「そういえばアユちゃんはどうしてずぶ濡れの世界に?」
「ん?ああ、中学の時にチビだったからイジメにあってね。そのとき決まってトイレとかプールとかでびしょ濡れにされたから。」
「イジメ・・・?」
あの頃の狭川さんからは想像できない。
「まぁ、やられてる子を助けたからそのかわりってこともあったけど、回を重ねる事に濡れたくてに変わったかな。」
アユちゃんは語りながら噴水に行き、噴水を浴び始めた。
「ね、リュウ君も浴びよう!」

そうして僕らはタイムリミットの2時間まで遊び尽くした。


プールから上がり、服をランドリーにかける。服は着替え、アユちゃんも濡れた服を着替えた。

帰り際、アユちゃんと話しした。
「昔の名簿持ってる?」
「多分。」
「なら、住所変わってないから、夕方からならいるから来て。お店じゃメアド交換できないの。」
「うん。わかった。」
「そんじゃね~」

僕は少しの懐かしさと嬉しさを胸に抱え、帰った。

コメント

小説スタイル

今回の文章、プランだてて計画的に人物の動きや配置を変え・・・たわけではないんです。
実は、背が小さいと書いた時点で同級生設定の計画はありませんでした。
そして、二人並んで座ったと書いているときに、事故で赤ボタンを押すという設定計画はありませんでした。
設定は後出しじゃんけん。後からうまい具合に持っていく。最初に前提条件(あらすじのような)を持っていかず、あえてノープランで書く。これは結構大変ですが、その分内容が濃くなりますヨ。

お久しぶりですw

Under the Water Cafeは、シリーズ化 希望 です!!

めちゃめちゃサイコーですww

まいど~

タイトルは・・・永久に・・・不滅ですっ!(涙目)
コースAと書いてある時点で続きを考えてたり、実はもうBを荒書きしてあったり。ラジバンダリ最近見なかったり(意味なし)

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://haword5555.blog.2nt.com/tb.php/81-858db152
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

ハワード(haword5555)

Author:ハワード(haword5555)
hawordの綴りが間違っているのは仕様です

Twitter...

ハワード 更新

カテゴリ

おしらせ (13)
単発WET小説 (20)
単発Messy小説 (5)
アイドルの楽しみ (10)
モデル体験記 (33)
AV女優という運命 (4)
シリーズ物(未定) (0)
雑文・その他 (14)
百合WAM小説 (3)

リンク

このブログをリンクに追加する

最新コメント

訪問者数(2009.2.21~)

最新記事

月別アーカイブ

Amazon

Amazon お気に入り

Amazon おすすめ商品

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード